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【美術解説】ジェフ・クーンズ「バルーンのような彫刻作品」

ジェフ・クーンズ / Jeff Koons

バルーンのような彫刻作品


※1:《Balloon Monkey》(2006−2013年)
※1:《Balloon Monkey》(2006−2013年)

概要


生年月日 1955年1月21日
国籍 アメリカ
表現媒体 ステンレス・スカルプチャー
代表作

・《Puppy》(1922年)

・《Balloon Dog》 (1994–2000)

公式サイト

http://jeffkoons.com

ジェフ・クーンズ(1955年1月21日生まれ)はアメリカの芸術家。

ポップカルチャーを主題とした表面に鏡面処理を施したステンレス製の彫刻作品が特徴である。現代美術史においてはシミュレーショニズム運動の代表的な作家として位置づけられている。

 

また、クーンズはアメリカにおけるキッチュ性を最もよく表現した作家の1人であり、現役で活動している現代美術家の中で、オークション市場で最も高価格で取引される作家の1人でもある。2013年11月に、クーンズの《バルーン・ドッグ(オレンジ)》は、クリスティーズがニューヨークで開催した「戦後美術と現代美術セール」で、5,840万ドル(約60億円)で落札された。

 

この価格はそれまでのクーンズの最高落札価格である5,500万ドルを大幅に上回るものだった。《バルーン・ドッグ(オレンジ)》は1990年代後半にグリニッジのコレクターのピーター・ブラントの注文で制作されたものだった。

 

美術批評家のクーンズに対する批評は真っ二つに分かれる。美術史において最重要で批評するものもいれば、クーンズの作品はキッチュであり、下品であり、商業的作品であると批評するものもいる。

重要ポイント

  • バルーンのようなステンレス作品が特徴
  • シミュレーショニズムの代表的な作家
  • アメリカのキッチュ性をよく表現している

略歴


若齢期


ジェフ・クーンズはペンシルヴァニア州ヨークで、ヘンリー・クーンズとグロリア・クーンズの間に生まれた。父は家具屋でインテリアコーディネーター。母はお針子だった。

 

幼少の頃クーンズはお小遣いを稼ぐために、学校から帰ると包装紙とキャンディを戸別訪問して販売していた。10代頃クーンズはサルバドール・ダリを尊敬しており、ニューヨークのセントレジスホテルにダリを直接訪ねたことがあった。

 

クーンズはシカゴ美術館附属美術大学やメリーランド美術大学で絵画を学ぶ。在学時にクーンズはエド・パシュケに出会い大きな影響を受け、1970年代後半に彼のスタジオでアシスタントとして働いた。

 

大学卒業後、クーンズは1977年にニューヨークに移動し、芸術家としてキャリアを積みつつ、MoMAで働く。この時代クーンズは、ダリの影響もあって髪を赤く染めて、鉛筆で口ひげを加えていた。

 

1980年にクーンズはミューチュアル・ファンドや株を売買するライセンスを得て、ウォール・ストリートのコモデティブローカーとして最初の投資会社を設立。フロリダのサラソータで両親と夏を過ごした後、クーンズはニューヨークに戻り、コモデティ・ブローカーとして仕事を始めた。

 

ジェフ・クーンズが芸術家としての名声が登り始めたのは1980年代なかばごろ。情報過多時代におけるアートの意味を探求する世代の一人として注目を集めるようになり始めた。

 

1985年「平衡」シリーズを発表。同年、ニューヨークのソナベント画廊がグループ展を企画、「ネオ・ジオメトリック・コンセプチュアル・アート」の名のもとに、美術史家ハル・フォスターが彼らの動向を理論づけ、その中心的存在とされたクーンズは一躍アート界の寵児となる。

 

その後、ニューヨークのブロードウェイとヒューストンストリートの交差点に位置するソーホー・ロフトに工場規模のスタジオを構え、30人以上のアシスタントを雇用し、作品制作を始めるようになる。それはアンディ・ウォホールの『ファクトリー』をモデルとしていた。

 

現在、クーンズのスタジオの広さは1500㎡にも及ぶ巨大なスペースで、90〜120人のレギュラー・アシスタントがいるという。クーンズは色に番号をで割り当てて指示を出す『カラーナンバー』システムを採用し、クーンズの片手のように各アシスタントに対してキャンバスや彫刻制作を指示を出すことができた。

作品と制作


ジェフ・クーンズは、メディア乱立時代におけるアートの意味を探求する芸術家世代の一人として、1980年なかばに注目を集めはじめた。

 

1980年代に認められ、その後ニューヨークのヒューストン・ストリートやブロードウェイの角にあるソーホー・ロフトに工場のようなスタジオを設立。

 

スタジオ内には30人以上のアシスタントが雇われ、アンディ・ウォーホルのファクトリーと同じようなモデルで、自身の作品のさまざまな側面で仕事を割り当てられた。クーンズの場合はナンバーカラーシステムを導入し、アシスタントがキャンバスや彫刻制作で担当する場所を番号で明確に割り当てた。

 

今日、クーンズは、チェルシーにある古いハドソン路線近郊に1,500平方メートルの工場を所有し、90〜120人のレギュラー・アシスタントを雇って制作をしている。

空気注入作品


1977年から1979年の間、クーンズはのちに初期作品として知られる4つの別々のアート作品を制作した。1978年からクーンズの膨張作品シリーズははじまる。鏡と一緒に膨らませた花やさまざまな大きさと色で構成されたうさぎの作品が制作された。

※2:《Inflatable Flower and Bunny》 (Tall White, Pink Bunny) 1979年
※2:《Inflatable Flower and Bunny》 (Tall White, Pink Bunny) 1979年

家庭用道具と平衡シリーズ


1979年以来、クーンズはシリーズ内で作品を制作してきた。クーンズの初期作品はコンセプチュアル・スカルプチュアとして制作されている。たとえば『The Pre-New』は照明器具にさまざまな家庭用道具が取り付けられたシリーズで、これまで見たことにない奇妙な新しい構図を美術界にもたらした。

 

ほかには『The New』という掃除機を使ったシリーズでは、照明が付いた透明のボックス内にフーバー社のようなブランド企業の家電製品を設置したものがある。

※3:《Nelson Automatic Cooker / Deep Fryer》1979年
※3:《Nelson Automatic Cooker / Deep Fryer》1979年

クーンズの最初の個展は1980年にニューヨークのニュー・ミュージアム・オブ・コンテンポラリー・アートで、窓際にこれらの作品が展示された。

 

また、クーンズは複数の掃除機の組み合わせをキャビネット内に配置し、並列させるシリーズ「Shelton Wet/Dry Doubledecker」を制作し、展示した。美術館でそれらの機械はまるでショールームに展示され、あたかも新しいコンセプトやマーケティングブランドを発表しているかのように、「The New」という表記された赤色蛍光灯とともに設置された。

 

ほかのクーンズの初期作品では3つのバスケットボールを蒸留水と少量の塩を用いて液体の中心に浮遊した状態にした《平衡シリーズ》(1983年)がある。これはノーベル賞受賞物理学者リチャード・P・ファインマンの助力を得て制作されたプロジェクトでもある。

※4:《New Shelton Wet/Dry Doubledecker》 1981年
※4:《New Shelton Wet/Dry Doubledecker》 1981年
※5:《Three Ball Total Equilibrium》
※5:《Three Ball Total Equilibrium》

ステンレス鋼彫像作品


1970年代にクーンズはエアートイのような彫刻をつくりはじめる。精巧に磨き上げたステンレス鋼を使い、まるで本物のエアーラビットのような彫刻《ラビット》を制作する。これが以後クーンズの代表作として知られるようになる。

 

オリジナルの《ラビット》は美術賞のイリアナ・ソナベントが所蔵しており、現在レプリカはシカゴ現代美術館が所蔵している。その後《ラビット》は繰り返し作られ、50フィート以上の高さの作品も制作された。

 

2009年10月13日、2007メイシーズ感謝祭パレードのときに使用された巨大なメタリック・モノクローム・カラー・ラビットが、CF トロント・イートン・センターの白夜祭のときに展示された。

 

ほかのシリーズ作品では、クーンズは土産屋で見かける陳腐な商品とバロック様式のイメージを組み合わせ、ロウブロウとハイブロウの境界線を曖昧にして楽しんでいる。

※6:《ラビット》(1986年)
※6:《ラビット》(1986年)

シミュレーショニズム・『贅沢と劣化』シリーズ


1986年にニューヨークのモニュメントギャラリーやロサンゼルスのダニエル・ワインバーグ・ギャラリーで開催されたクーンズの名祖となる展覧会で、初めて『贅沢と劣化』シリーズが開催。アルコールを中心とした作品群が展示された。

 

この作品群の中には、ステンレス製の旅行用コクテイル・キャビネット、バカラの水晶デカンター、そのほかアルコールに関するハンドメイドのさまざまなオブジェ作品、またゴードンズ・ジンのフレーム入り広告("I Could Go for Something Gordon's")やヘネシーのフレーム入り広告("Hennessy, The Civilized Way to Lay Down the Law")などアルコールメーカーの広告がキャンバスに艶めかしく描かれれ、それらをアートワークの文脈として再利用し、新たな価値を提示する展示を行った。それらは「ボードリヤールの消費社会における卑猥で乱雑な検閲的思想を支持する伝統的広告への批判」でもあった。

 

ほかの作品には、ジム・ビームが制作した機関車の形状の特異なボトルを基盤にした《J.B. Turner Engine》(1986年)がある。クーンズはこの機関車の表面を輝くステンレス鋼素材に変更して制作した。 

※7:Luxury and Degradation International With Monument Gallery, New York, New York [closed October 12, 1986]
※7:Luxury and Degradation International With Monument Gallery, New York, New York [closed October 12, 1986]
※8:1987年にクーンズにより作られたKiepenkel像のレプリカ
※8:1987年にクーンズにより作られたKiepenkel像のレプリカ