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【作品解説】エドガー・ドガ「オペラ座のオーケストラ」

オペラ座のオーケストラ / The Orchestra at the Opera

風俗画と肖像画の境界線上にある作品


《オペラ座のオーケストラ》1870年
《オペラ座のオーケストラ》1870年

概要


作者 エドガー・ドガ
制作年 1870年
メディア 油彩
サイズ 450 cm × 560 cm
所蔵者 オルセー美術館

《オペラ座のオーケストラ》は、1870年にエドガー・ドガによって制作された油彩作品。450 ×560 cm。オルセー美術館所蔵。

 

ドガは意図的に、通常は描かれるはずの劇場の舞台を不明瞭にし、代わりに舞台下の観客座席、なかでも音楽演奏席に焦点を置いて描いた。音楽演奏席と舞台のコントラストは、3つのエリアの描き方の違いで補強されている。

 

描かれた劇場は3つのエリアに分かれている。画面の一番下は観客席、中央が音楽演奏席、画面の一番上がバレリーナが踊る舞台である。この絵画ではバレリーナの脚がフットライトで照らされているが、上半身がカットされている。

 

X線による解析で、ドガは意図的にキャンバスの側面と上部を切断したことが分かっていおり、そのためこの構図は、彼が予定していた構図よりかなり熟考されて作られたものである。

 

また、キャンバスをカットした後に、コントラバスやハープなど楽器が追加され、音楽演奏席を華やかに見えるよう工夫されていることから、主題は舞台上のバレエではなく、音楽演奏席であるのは明らかである。

 

描かれた演奏家の中には、ドガの知り合いが何人かいる。たとえば作曲家のエマニュエル・シャブリエやバスーン奏者のデシール・ディハウが描かれている。

 

ドガは本作で風俗画と肖像画の境界線を曖昧にしている。当時のフランスの生活を描いた風俗画であると同時に、中央に描かれた音楽奏者たちと彼らが扱う楽器が正確に描かれていることから集団肖像画ともいえる。

 

一方で、舞台上の踊り子たちはほとんど描かれていない。美術史家のチャールズ・スタッキーは、バレエ鑑賞で注意散漫になっている観客の視点を比較し、「ドガの魅力とは、ときどきよそ見をする観客の視点の動きを含む、一瞬の「動き」の描写力で、それは瞬時をとらえて描く「印象派」に通じるものである」と説明している。